
1. 「機能テスト」とは何か?
まず基本からおさらいしましょう。
機能テスト(Functional Testing)とは、システムが「仕様書通りに正しく動作しているかどうか」を確認するテストです。
例えば:
・ログインフォームで正しいIDとパスワードを入れるとログインできるか?
・商品をカートに入れた後、購入フローに進めるか?
・削除ボタンを押すと、データが確実に削除されるか?
このように、「想定された入力に対して、正しい出力が返るかどうか」を確認するのが目的です。主観的な感覚ではなく、あくまで仕様基準でテストを実施します。
ただし、ここに落とし穴があります。
3. 「ユーザー視点」とは何を指すのか?
「ユーザー視点」とは、開発者やテスターの視点ではなく、実際に使うエンドユーザーの立場からサービスを見つめ直すという考え方です。
具体的には、
・直感的に操作できるか?
・わかりやすい言葉・レイアウトになっているか?
・ミスを起こしにくいか?
・目的の操作にたどり着くまでの流れがスムーズか?
こうしたポイントは、機能テストではカバーしきれない部分です。「使える」けれど「使いづらい」というプロダクトが生まれるのは、このギャップが原因です。
4. なぜ「仕様通り」なのに使いにくいのか?
開発現場でよくある誤解が、「仕様を守れば、自然と良いUXになる」というものです。しかし現実には、仕様通りであっても、ユーザーが「わかりにくい」「操作しづらい」と感じることは珍しくありません。
例:設定画面の「保存」ボタンが見つからない
ある業務システムでは、設定を変更後に「保存」ボタンを押す仕様でした。ボタンはUIの右下に配置されており、機能テストでもすべて正常に動作。しかし実際のユーザーは、「保存せずにページを離れる」ケースが多発。理由は、保存ボタンがスクロールしないと見えず、存在に気づかないという設計ミスでした。
このように、機能的に問題がなくても、UI・UXの設計次第で“使いづらい”と感じられることは多々あります。
5. ユーザビリティ × 機能テストの重要な関係
「ユーザー視点をどうテストに取り入れるか?」
その答えが、ユーザビリティテストと機能テストのハイブリッドです。
組み合わせ方のポイント:
・テストケースに“ユーザー行動”のシナリオを加える
→ 例:「検索から目的の商品を3分以内に見つけて購入完了できるか?」
・ユーザーによる実地テストを観察し、違和感を記録する
→ 動作上のエラーはなくても、操作に戸惑っている様子が見える
・デザインや配置を“どう感じるか”の主観も評価項目に加える
→ 例:「ボタンが押したくなる見た目か」「説明が足りているか」
動作確認だけでは見えない“使いやすさ”の課題を発見できるのが、このアプローチの最大の価値です。
6. 実例:仕様は正しくてもUXで失敗したケース
ケース:モバイルアプリのフィルター機能
あるショッピングアプリでは、商品検索のフィルター機能を新たに追加。カテゴリや価格帯などを細かく指定できる仕様でした。機能テストではすべてパスし、動作に問題はありませんでした。
しかしリリース後、実際のユーザーがフィルター機能をほとんど使っていないことが判明。ユーザーテストの結果、原因は「フィルター」ボタンのデザインが地味で、広告と見間違えられていたこと。また、選択肢が多すぎて“選び疲れ”が発生していたのです。
開発チームはデザインとラベル名を改善し、選択肢もグループ化して表示を簡潔にしたところ、フィルター利用率が3倍に増加しました。
仕様通りに動作しているかを確認する機能テストは重要ですが、それだけでは「使いやすさ」や「ユーザー満足」は測れません。実際のユーザーがどのようにサービスを使い、どこでつまずくのかという視点をテスト設計に取り入れることで、初めて“本当に使える”プロダクトが実現できます。ユーザー視点と機能仕様のギャップに目を向け、ユーザビリティと品質の両立を図ることが、これからのソフトウェア開発におけるテストのあるべき姿です。
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