
ある調査では、基幹システム刷新に取り組む企業の約70%が、当初の計画通りの納期・予算・機能を達成できない「プロジェクト不全」に陥っているという結果が報告されています。また、経済産業省が「2025年の崖」で警鐘を鳴らした問題は2026年に入っても解消されておらず、IPAとレガシーシステムモダン化委員会が2025年に公表した総括レポートによれば、レガシーシステムの刷新を「一部でも進めている」と回答した企業は全体の約半数にとどまり、大企業でも65.5%、中小企業では43.8%という状況です。刷新に失敗し続けた場合の経済損失は、最大で年間12兆円に達するとも試算されています。
本記事では、なぜシステム刷新プロジェクトがこれほど高い確率で失敗するのか、その典型的な原因を整理するとともに、成功する企業に共通するポイントを解説します。AI開発やAIモダナイゼーションを活用した最新の進め方、レガシー刷新を成功に導く体制づくり、AIエージェント開発による運用定着、そして専門パートナーによるAX支援の活用についても紹介します。
システム刷新プロジェクトが直面する現実
まず、システム刷新を取り巻く現状を数字で押さえておきましょう。
- 21年以上稼働している基幹システムは全体の約6割に達しており、老朽化が深刻化しています
- レガシーシステムを保有している企業は、ユーザー企業全体で61%、大企業に限ると74%にのぼります
- レガシーシステムの刷新が進まない最大の理由は「他案件で手が埋まっており十分な要員を割けない」ことで、39.9%の企業がこの人的リソース不足を課題として挙げています
このように、多くの企業がシステム刷新の必要性を認識しながらも、実際に着手できていない、あるいは着手しても計画通りに進められていないという実態が浮き彫りになっています。
システム刷新が失敗する典型的な原因
1. 旧システムのブラックボックス化
システム刷新プロジェクトが失敗する最大の要因は、旧システムのブラックボックス化だと言われています。仕様書が存在しない、あるいは実態と乖離しているケースが多く、長年の場当たり的な改修によってスパゲッティ状態になったソースコードを紐解くだけで、当初の見積もりを大きく超えるコストがかかることも珍しくありません。
さらに、システム構造を熟知したベテラン技術者の退職により、ドキュメント化されていない暗黙の仕様が、プロジェクトの途中で次々と明らかになるケースもあります。
2. 「現行踏襲」という落とし穴
意外に見落とされがちなのが、「現行システムと同じものを新しく作ればよい」という考え方が招くリスクです。現行踏襲は一見シンプルなプロジェクトに思えますが、実際には長年の改修を経た現行システムと同等の機能要件を、新しいパッケージや技術で再現すること自体が高難度な作業です。現場をよく知る利用部門の関与なしに情報システム部門だけで進めてしまうと、業務実態とかけ離れたシステムが出来上がってしまいます。
3. 一括移行(ビッグバン移行)によるリスクの集中
すべての機能を一度に切り替える「ビッグバン移行」は、障害発生時の影響範囲が非常に大きくなります。トラブルが起きれば基幹業務全体が停止し、企業活動に深刻な影響を及ぼしかねません。
4. ベンダーロックインによる再ブラックボックス化
特定のベンダーに依存しすぎることで、刷新後のシステムが再びブラックボックス化するリスクも見過ごせません。ベンダー側の都合が良いパッケージや開発手法を採用した結果、自社の業務にシステムを合わせるのではなく、業務をシステムに無理やり合わせることになり、現場の不満が高まって結局Excelでの手作業が復活してしまう、という本末転倒な事態も起こり得ます。
5. テスト不足による移行後のトラブル
スケジュールやコストを優先するあまり、十分なテストを行わずに本番移行してしまうケースも少なくありません。特に、新旧システムで同じ結果が得られるかを確認するテストや、大量データを扱う性能テストの不足は、移行後の重大な障害に直結します。
失敗する企業と成功する企業の共通点【比較表】
これまでの原因を踏まえ、失敗しやすい企業の特徴と、システム刷新を成功させる企業に共通する特徴を比較してみましょう。
この比較から見えてくるのは、成功する企業は「技術の置き換え」だけでなく、「業務プロセス」「組織体制」「移行後の運用」までを一体として設計しているという点です。
システム刷新を成功に導く3つのポイント
1. AIを活用したアセスメントで現状を正確に把握する
近年、AI開発の知見を活かしたコード解析ツールの活用が広がっています。AIは膨大なソースコードやジョブ定義を高速に解析し、依存関係や業務ロジックの全体像を短期間で可視化できます。これにより、従来は数ヶ月かかっていた現状把握を大幅に短縮しつつ、見積もりの精度を高めることができます。
2. 段階的な移行とAIモダナイゼーションの組み合わせ
一括移行のリスクを避けるためには、重要度の低い周辺システムから着手し、段階的に適用範囲を広げていくアプローチが有効です。AIモダナイゼーションの考え方を取り入れ、AIによるコード変換やテスト自動化を組み合わせることで、コストとリスクのバランスを取りながらレガシー刷新を進めることができます。
3. 移行後の運用まで見据えたAIエージェント開発
システム刷新は、新システムをリリースして終わりではありません。移行後の監視や一次対応を担うAIエージェント開発を組み込むことで、属人化を防ぎながら継続的にシステムを改善していく体制を構築できます。ドキュメントの整備とナレッジ共有を並行して進めることも、将来的な属人化の再発防止につながります。
自社だけで進めることが難しい場合は専門パートナーの活用を
ここまで見てきたように、システム刷新を成功させるためには、技術面だけでなく、業務プロセスの見直しや組織体制の構築、移行後の運用設計まで幅広い視点が求められます。しかし、人的リソース不足が最大のボトルネックであるという調査結果が示す通り、これらすべてを自社だけで完結させることは容易ではありません。
そこで有効なのが、AX支援を提供する専門パートナーとの連携です。現状分析からAI活用によるアセスメント、移行戦略の策定、実装、移行後のAIエージェント運用まで、一気通貫でサポートしてもらうことで、社内リソースの制約を補いながら、システム刷新を全社的な変革(AX)へとつなげることができます。
システム刷新プロジェクトの約7割が計画通りに進まないという厳しい現実がある一方で、原因を紐解くと、失敗パターンにはブラックボックス化した旧システム、一括移行のリスク、現場軽視、テスト不足といった共通点が見えてきます。逆に、成功する企業は、アセスメントの徹底、段階的な移行、現場と経営層の一体的な関与、そしてAIを活用した効率化を組み合わせている点が共通しています。
AI開発やAIモダナイゼーションを活用しながらレガシー刷新を進め、移行後はAIエージェント開発によって運用を継続的に改善していく——このサイクルを自社だけで回すのが難しい場合は、経験豊富なAX支援パートナーとの連携も有効な選択肢です。システム刷新を単なる技術更新で終わらせず、企業全体の変革の起点として捉えることが、成功への近道と言えるでしょう。
Hatonetは、エンジニアや戦略コンサルなどの専門家が集結する、AI駆動と組織AXへの変革を牽引する伴走型ソリューションカンパニーです。
新規事業の立ち上げから大手企業のDX支援まで、開発の上流から下流まで一貫したサービスを提供しています。
パートナーを見つけるコストを節約します。
さらに、日本常駐エンジニア・AI専門家・Google Cloudの強みを掛け合わせ、スピード・精度・低リスクを兼ね備えたシステム刷新を実現する、新たな時代のIT戦略・開発パートナーです。
メール: nagata@hatonet.jp
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