
AWSは豊富なサービスと長年の導入実績を持ち、幅広い企業のシステム基盤として利用されています。一方、Google CloudはAI・機械学習、データ分析、コンテナ・Kubernetesなどの分野に強みを持ち、近年企業での導入が拡大しています。
実際、世界のクラウド市場では両社とも主要なプレイヤーとなっています。Synergy Research Groupによると、2026年第2四半期のクラウドインフラサービス市場におけるシェアは、Amazonが28%、Googleが15%となっています。市場全体も前年同期比43%と大きく成長しており、生成AIを中心としたクラウド需要が拡大しています。
では、AWSとGoogle Cloudにはどのような違いがあり、企業はどちらを選ぶべきなのでしょうか。
本記事では、AWSとGoogle Cloudの違い、料金、性能、AI・データ分析、セキュリティ、運用面などを比較し、企業に適したクラウドの選び方を解説します。
AWSとGoogle Cloudの基本的な違い
まず、AWSとGoogle Cloudはどちらも、サーバー、ストレージ、データベース、ネットワーク、AI、セキュリティなど、企業システムに必要な幅広いクラウドサービスを提供しています。
代表的なサービスを比較すると、以下のようになります。
AWSは非常に幅広いサービスを展開しており、既存の企業システムからWebサービス、EC、IoT、データ基盤まで、多様な用途に対応しやすいことが特徴です。
一方、Google CloudはGoogleが長年培ってきた検索、データ処理、AI、機械学習、コンテナ技術などを背景に、データ活用やAI、クラウドネイティブ開発との親和性が高いことが特徴です。
AWSの特徴とメリット
1.豊富なサービスと高い柔軟性
AWSの大きな特徴は、利用できるサービスの幅広さです。
仮想サーバー、データベース、ストレージ、ネットワーク、セキュリティ、監視、AI、IoTなど、企業システムに必要な機能をAWS上で構築できます。
特に、既存システムを段階的にクラウドへ移行したい企業にとって、選択肢が多いことは大きなメリットです。
2.豊富な導入実績
AWSはクラウド市場において長くトップクラスのシェアを維持しています。
Gartnerの2024年IaaS市場調査では、AWSの市場シェアは37.7%で、世界最大のIaaSプロバイダーでした。
そのため、AWSに関する技術者や導入事例、ナレッジなども比較的見つけやすく、既存のAWS環境を運用・拡張しやすい点もメリットです。
3.大規模・複雑なシステムに対応しやすい
AWSは、スタートアップから大企業まで幅広い規模のシステムに利用されています。
ECサイト、金融サービス、業務システム、モバイルアプリなど、さまざまなワークロードに対応できるため、将来的にシステム規模が拡大する可能性がある企業にも適しています。
Google Cloudの特徴とメリット
1.AI・機械学習に強い
Google Cloudの大きな強みの一つが、AI・機械学習です。
Google Cloudでは、Vertex AIを中心に生成AIや機械学習を活用するためのサービスが提供されています。
近年は生成AIの企業利用が急速に拡大しているため、
- AIチャットボット
- 社内検索
- AIエージェント
- 文書解析
- 画像・音声認識
- 需要予測
- レコメンド
などのAI活用を検討している企業にとって、Google Cloudは有力な選択肢になります。
2.データ分析に強い
Google Cloudを代表するサービスの一つがBigQueryです。
BigQueryは、大量のデータを高速に分析するためのデータウェアハウスで、企業のBIやデータ分析基盤として利用できます。
Google Cloud自身も、BigQueryをデータ分析・AI活用の主要サービスとして位置付けています。
例えば、
「顧客データを分析してマーケティング施策につなげたい」
「複数のシステムに分散しているデータを統合したい」
「AIの学習・推論に大量のデータを利用したい」
といった企業では、Google Cloudのメリットを活かしやすいでしょう。
3.Kubernetes・コンテナとの相性が良い
GoogleはKubernetesの開発に深く関わっており、Google CloudではGoogle Kubernetes Engine(GKE)が提供されています。
マイクロサービスやコンテナを中心としたシステムを構築する企業にとって、GKEは有力な選択肢です。
また、コンテナをよりシンプルに運用したい場合には、Cloud Runのようなサーバーレスサービスも利用できます。
そのため、
「コンテナ × Kubernetes × マイクロサービス」
という構成を採用する企業では、Google Cloudを検討する価値があります。
AWSとGoogle Cloudを5つの観点で比較
ここからは、企業がクラウドを選ぶ際に重要となるポイントを比較します。
① サービスの豊富さ
サービスの種類や選択肢の多さでは、AWSが非常に強いポジションにあります。
複雑なシステム要件に対応するために、多くの選択肢から最適なサービスを組み合わせたい企業にはAWSが向いています。
一方、Google Cloudはサービス数だけでなく、データ分析、AI、コンテナなど特定領域の強さが魅力です。
幅広い選択肢を求めるならAWS、AI・データ・クラウドネイティブを重視するならGoogle Cloudという考え方ができます。
② 料金
「AWSの方が安い」「Google Cloudの方が安い」と単純に判断することはできません。
クラウド料金は、
- CPU・メモリ
- ストレージ容量
- データ転送量
- データベース
- 稼働時間
- リージョン
- 利用するサービス
- 割引プラン
などによって大きく変わります。
Google Cloudも従量課金を基本とし、利用量や契約形態に応じた割引などを提供しています。
そのため、クラウド料金を比較するときは、単純に「サーバー1台あたりの料金」を見るのではなく、システム全体のTCO(Total Cost of Ownership)で比較することが重要です。
③ AI・機械学習
AI活用を重視する場合、Google Cloudは非常に有力な候補です。
Googleは検索や広告、画像認識、自然言語処理など、大規模なAI技術を長年開発してきました。
Google CloudではVertex AIなどを利用してAI・機械学習を企業システムへ組み込みやすい環境が整っています。
一方、AWSもAmazon BedrockやSageMakerなど、生成AI・機械学習向けのサービスを展開しています。
つまり、
AIだからGoogle Cloud、という単純な選択ではなく、自社が利用したいAIモデル・データ基盤・既存システムとの連携まで考えることが重要です。
④ データ分析
大量のデータを蓄積・分析する企業では、Google CloudのBigQueryが大きな魅力になります。
一方、AWSにもRedshift、Athenaなどのデータ分析サービスがあり、AWS上に既存のデータ基盤が構築されている場合は、そのままAWSを利用するメリットがあります。
特に、
- ECサイト
- 求人・人材サービス
- SaaS
- マーケティング
- 金融
- メディア
など、大量のユーザーデータを扱う企業では、クラウド選定時にデータ分析環境まで考える必要があります。
⑤ 運用・人材
クラウドを導入する際に忘れてはいけないのが、「誰が運用するのか」という問題です。
AWSもGoogle Cloudも高機能ですが、その分、設計・セキュリティ・監視・コスト管理などの専門知識が必要になります。
例えばAWSでは、
- IAM
- VPC
- EC2
- S3
- RDS
- CloudWatch
など、複数のサービスを組み合わせて環境を構築します。
Google Cloudでも、
- IAM
- VPC
- Compute Engine
- Cloud Storage
- Cloud SQL
- BigQuery
- GKE
などの知識が必要になります。
したがって、クラウド選定では「どちらが高機能か」だけでなく、自社に必要なスキルを持つエンジニアを確保できるかも重要な判断材料です。
AWSとGoogle Cloud、企業別におすすめなのは?
では、具体的にどのような企業にAWS・Google Cloudが向いているのでしょうか。
AWSがおすすめの企業
以下のような企業ではAWSが有力な候補になります。
- 既存システムがAWS上に構築されている
- 幅広いAWSサービスを利用したい
- 大規模なWebサービスを運用している
- AWSエンジニアを確保しやすい
- 複雑なシステム要件に柔軟に対応したい
- 既存のAWS資産を活かしたい
特に、すでにAWSを利用している企業が、別のクラウドへ移行する場合には、移行コストやエンジニアリングコストまで考える必要があります。
Google Cloudがおすすめの企業
一方、以下のような企業ではGoogle Cloudが有力です。
- AI・生成AIを積極的に活用したい
- 大量のデータを分析したい
- BigQueryを活用したい
- Kubernetes・コンテナを中心に開発したい
- GoogleのAI・データ関連技術を活用したい
- クラウドネイティブなシステムを構築したい
特に、今後AIエージェントや生成AIを業務へ組み込みたい企業では、AIだけでなくデータ基盤・API・アプリケーション・セキュリティまで含めたクラウド設計が重要になります。
AWSとGoogle Cloud、実は「どちらか一方」とは限らない
企業のクラウド戦略では、AWSかGoogle Cloudかを完全に二者択一で決める必要がないケースもあります。
例えば、
AWS:既存業務システム・基幹システム
Google Cloud:AI・データ分析基盤
というように、目的に応じて複数のクラウドを利用する「マルチクラウド」という考え方もあります。
実際、企業のクラウド活用では、AI、データ、システムのモダナイゼーションなど複数の要件を同時に満たす必要があり、ハイブリッド・マルチクラウドへの対応も重要になっています。
ただし、マルチクラウド化すると、
- 運用が複雑になる
- セキュリティ管理が難しくなる
- エンジニアに必要なスキルが増える
- データ連携コストが発生する
といったデメリットもあります。
そのため、「複数クラウドを使うこと」自体を目的にするのではなく、事業上のメリットがあるかどうかを基準に判断することが大切です。
AWSとGoogle Cloudを選ぶ際に重要な5つのポイント
最後に、クラウド選定時に確認したいポイントを整理します。
1.現在のシステム環境
既存システムがAWSなのか、Google Cloudなのか、オンプレミスなのかを確認します。
2.将来の事業計画
今後、ユーザー数やデータ量が増えるのか、海外展開するのか、AIを導入するのかを考えます。
3.必要な技術
AWS、Google Cloudそれぞれで利用したいサービスを明確にします。
4.運用体制
クラウド環境を設計・構築・監視できるエンジニアが社内にいるかを確認します。
5.TCO
初期費用だけではなく、開発・運用・監視・人材・データ転送などを含めた総コストで比較します。
AWSとGoogle Cloud、企業に最適なのは「目的によって異なる」
AWSとGoogle Cloudは、どちらが一方的に優れているというものではありません。
AWSは、豊富なサービス、柔軟性、幅広い導入実績が大きな強みです。
一方、Google Cloudは、AI、データ分析、Kubernetes、クラウドネイティブ開発などの領域で強みを発揮します。
そのため、
幅広いシステムを柔軟に構築したい → AWS
AI・データ分析を重視したい → Google Cloud
コンテナ・Kubernetesを中心に開発したい → Google Cloud
既存AWS環境を活用したい → AWS
というように、自社の目的やシステム要件に合わせて選択することが重要です。
また、クラウド選定で本当に重要なのは、単純なスペック比較ではありません。
「どのクラウドを選ぶか」だけではなく、
「そのクラウドを使って、どのように事業・業務を改善するのか」
まで考えることが、クラウド導入を成功させるポイントです。
Hatonetでは、クラウドを活用したシステム開発やAI・クラウドネイティブ開発など、企業のIT課題に合わせた開発支援を行っています。
AWSとGoogle Cloudのどちらを選ぶべきか迷っている場合も、既存システム、必要な機能、予算、将来的なAI活用などを整理したうえで、自社に適したクラウド環境を検討することが重要です。
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